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# 古代インド哲学史#1 初期ヴェーダ(自然宗教と祭祀至上主義) ### リグ・ヴェーダ ヴェーダとは、知識(特に宗教的知識)という意味であり、そして、それらに関する文献のことを「ヴェーダ」という。ヴェーダは次の四つに分けられる: - 『リグ・ヴェーダ』 - 『サーマ・ヴェーダ』 - 『ヤジュル・ヴェーダ』 - 『アタルヴァ・ヴェーダ』。 そして、これらのヴェーダの中でもっとも古く最も重要なのは、`『リグ・ヴェーダ』(Rg-veda)`である。リグ・ヴェーダは紀元前1000年以上前から口頭で伝承されてきた神への賛歌を文字におこしたものであり、それはインド・アーリア人の哲学的・宗教的思索の集大成に他ならない。このヴェーダがバラモン教を形作り、そしてまたそれが現在のヒンドゥー教に受け継がれることになる。 各ヴェーダは、通常、本集の「サンヒター」を指すが、これの後に付属文献として`ブラーフマナ(Brahmana, 梵書)`、`アーラヌヤカ(Aranyaka, 森林書)`、`ウパニシャッド(Upanisad, 奥義書)`が成立する。ここでは、金岡(p.98)の分類に準じて、サンヒターを「第一次ヴェーダ」、ブラーフマナを「第二次ヴェーダ」、アーラヌヤカとウパニシャッドを「第三次ヴェーダ」とする。 ### 第一次ヴェーダ(サンヒター) リグ・ヴェーダは神々への賛歌であり、それが賛美する宗教は多神教である(そこにおける神々の数は33とも3339とも言われる)。それらはもともと自然現象を神格化し、また、擬人化したものである。例えば次のような神が挙げられる:天神ディヤーヴァー(ギリシャ神話のゼウスと同根)神々に対する賛歌の内容は、多くの場合、現実的な願望(健康、繁栄、勝利など)の充足を願うものである。そして、このような現実的な願望に対する呪法に加えて、哲学的思索も垣間見える。それは、上記のような多神論的な宗教観からヴェーダの詩人達は、これらの神々の根源に唯一の神、最高神、を探求した。この最高神への探求が最高原理(ブラフマン)への哲学的思索となったと考えられている。 ## 第二次ヴェーダ(ブラーフマナ) 紀元前1000年から紀元前400年にかけてインド・アーリア人は東方に進出した。そして、それによって産業が活発するに従い、貧富の格差が広がりカースト制が厳密なものとなった。そのような社会背景のなかブラーフマナは、生じた。 ブラーフマナは、祭祀論の書であり、そこには厳密な祭祀の手順とそれの解説が書かれている。この厳密な祭祀の手順によって神に働きかけて人々の願望が達成されると考えた。そして、その祭祀を行なえるのはカーストの頂点であるバラモン(祭祀執行者)だけであった。それによって、バラモンは神を動かすことに出来る存在、または、神々を支配することのできる存在になった。彼らは、神以上の権力を有し、そして、バラモン中心に社会秩序が形成されることになる。 これに加えて、ブラーフマナには二つの住目すべき特徴がある。一つは、根源的な神に対する思索、二つめは死後の世界への思索である。前時代における神々は自然宗教的なものであったが、そこから全ての根源である創造主を思索し、そして当時その神はプラジャーパティであると考えられた。しかし、この最高神は後のウパニシャッドにおいてより抽象的な非人格的最高原理であるブラフマンに取って代わることになる。また、後者の死後の世界に関する思索も行なわれた。それは、現世における幸福は祭祀によってもたらされると考えられたが、それに加えて死後の世界(ここはヤマ(閻魔)が支配する世界)における安寧も求めたからである。そして、死後の世界で追善を行なわないもの、祭祀を怠った者は地獄にいくと考えられた。 --- ## 参考文献 1. 金岡秀友 (著)、『インド哲学史概説』、佼成出版社、1990 1. 金倉圓照 (著)、『インド哲学史』、平楽寺書店 1987 1. 立川武蔵 (著)、『はじめてのインド哲学』、講談社、1992 1. 早島鏡正 (著)、『インド思想史』、東京大学出版会、1982 1. 針貝邦生 (著)、『ヴェーダからウパニシャッドへ (Century Books―人と思想)』、清水書院、2000 1. 前田専学 (著)、『インド哲学へのいざない ヴェーダとウパニシャッド』、NHK出版、2000
地神プリティヴィー
太陽神スーリヤ
暁紅神ウシャス
暴風神ルドラ(後のヒンドゥー教のシヴァ)
風神ヴィーユ
火神アグニ
雷霆神インドラ(帝釈天)
造物主プラジャーパティ
First posted 2010/04/14
Last updated 2010/04/15
Last updated 2010/04/15