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# 近代哲学史#1 ルネサンス ## ルネサンス 中世は教会の伝統や習慣によって人々の思想を抑圧したがそれに反発する運動が14世紀から始まった。 しかし、千年の間に教会が形成した伝統は根深く、それに立ち向かうために人間が生き生きとしていた古代の時代に助けを求めた。 これが古代復興(ルネサンス)となった。 ルネサンスは、`人文主義(Humanismus)`と呼ばれるように、神と人間の関係を逆転させた。 つまり、中世は神を思想の中心に据えたが、この時代は人間を思想の中心に据え、人間が持つ`理性(ratio)`が重んじられた。 ルネサンスは、最初イタリアで始まり西側の国々に波及していき、芸術、文学、科学などさまざま分野の可能性を花開かせ新たな文化を形成した。 この時代における哲学も例外ではなく、中世における古典のキリスト教的解釈に反発し、新たに解釈し直そうとする動きが始まった。そして、その中心になったのがプラトンとアリストテレスである。そして古代の二大哲学者の他にもストア派、エピクロス派、懐疑論派などの哲学も復興された。 --- ルネサンス最初期の古代哲学研究はイタリアで始まった。 ## プラトン・アカデミー メディチ家の庇護されたフィレンツェのプラトン主義者プレトン(Gemistos Plethon)を中心としたプラトン研究を残した。 ### マルシリオ・フィチーノ(Marsilio Ficino, 1433-1499) プラトンの著書を翻訳し、新プラトン主義的な研究を残した。『プラトンの神学』 ### ピコ・デラ・ミランドラ(Pico della Mirandola, 1463-1494) アリストテレスとプラトンの融和を目指した。人間の自由と尊厳を訴えた。 ## アリストテレス主義 ### ポンポナッツィ(Pietro Pomponazzi, 1462-1525) アリストテレス解釈は、アヴェロエスの汎神論的能動知性の解釈とアレクサンドロスの自然主義的解釈が対立していた。 ポンポナッツィは、アレクサンドロスの立場を採り、知性の不死性を否定した。 知性は肉体と不可分であり、肉体が死ねば知性も死ぬ。 また、彼は魂の不死性も否定した。 --- ## ルネサンスの影響 ルネサンスによるヒューマニズムは様々な領域に波及した。 #### 政治・社会哲学 1517年にルターやカルヴァンによる宗教改革が起こり、教会の権威が失墜した。 また、これは政治、社会、科学といった領域における思想にも影響を与えた。 マキャベリなど。 #### 自然哲学 中世において、教会の権威の下支配的だった世界観は、アリストテレス=プトレマイオスと呼ばれる宗教的な世界観であった。 それによると、第一起動者(不動の動者)は超越存在であり、地球は宇宙の中心であり、そして、天上と地上は二元論的関係である。 これに対し、中世末期にクザーヌスが主張した汎神論的世界観、すなわちこの世界は神のあらわれであるという考えがルネサンスで顕著になった。 このような汎神論的世界観といった"生きた自然観"はブルーノに受け継がれ、またそれとは対比的に"機械的自然観"いわゆる科学的・数学的な世界観は、ケプラー(惑星の楕円軌道法則)、ベーコン(帰納法)、ガリレイ(仮説と実験)等によって形成された。 そして、自然科学による世界認識は哲学にも大きな影響をもたらした。 --- ### マキャベリ(Niccolo Machiavelli, 1469-1527) 政治哲学の著である『君主論』の中で、手段よりも目的を優先すべしと主張した(いわゆる、`マキャベリズム`)。 この主張は、目的のためであれば、時としてキリスト教道徳であっても無視してよいということであり、ある意味、人間を中心に据えるルネサンスの思想を極端な形であらわしている。 だが、もう一つの著である『ディスコルシ』では民主制を推奨しているなどの点から、『君主論』はメディチ家に進呈するために書かれたものでありマキャベリの真意ではない、もしくは、大衆向けに書かれた風刺書であるとも考えられている。- 著作
- 『君主論』Il Principe (1513)
- 『ディスコルシ』Discorsi (1517)
**種族のイドラ**(idola tribus) | 人間という種族は感覚を事物の判断基準とし、それを真実とするが、感覚は事物の本性をゆがめて伝える。また、自然を擬人的に見たり、目的論を読み込んだりする偏見も含まれる。 |
**洞窟のイドラ**(idola specus) | 環境による偏見。個人的な性質や習慣、教育、環境によってできた判断の習性や傾向のこと。 |
**市場のイドラ**(idola fori) | 言語による偏見。言葉の意味は曖昧であり、それにより人は在りもしないものをあたかも在るかのごとくに思う。 |
**劇場のイドラ**(idola theatri) | 歴史上の舞台に登場した学説を、すなわちその実架空の物語に過ぎないものを権威や伝統の名の下に無批判的受け入れることによる偏見。 |
- 著作
- 『学問の進歩』Of the Proficience and Advancement of Learning, Divine and Human (1605)
- 『ノヴム・オルガヌム』Novum Organum (1620)
- 著作
- 『リヴァイアサン 国家論』Leviathan (1651)
世界はその言語を学び、それが書かれている文字に慣れなければ読み解くことはできない。その言語とは数学の言語であり、文字とは三角形、円、そして、その他の幾何学図形である。 これらなしでは一言も世界を理解することができない。 [Opere Il Saggiatore p.171, 筆者訳]世界は数学の言語に変換可能であるという考えをフッサールは自然主義と呼んだ。 そして、後にフッサールの『危機』にて現代において信仰ともいえるような科学に対する盲目的な信頼を生み出したと批判している。
- 著作
- 『イル・サジアトーレ』Il Saggiatore (1623)
- 『新科学対話』Discorsi e Dimostrazioni Matematiche Intorno a Due Nuove Scienze (1638)
First posted 2008/10/02
Last updated 2012/03/19
Last updated 2012/03/19