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# カント「判断力批判」#1 第三批判の全体図 ## 判断力批判(Kritik der Urteilskraft) カント哲学の第三批判である『判断力批判』は、第一批判(『純粋理性批判』)と第二批判(『実践理性批判』)において言及された理論と実践の領域の橋渡しとしての役割をになっており、この第三批判によってカントの批判哲学は完成する。また、これは、美に関して哲学的洞察を行った先駆的な著書であるされ、美学や芸術哲学で特に重要視される。第三批判は、「個別から普遍を見出す認識能力」である「判断力」に関する批判である。これは規則的判断力と反省的判断力に分けられる。規則的判断力(アプリオリな総合判断)は第一批判において研究された。そして、第三批判における判断力、すなわち、「反省的判断力」は人間の快・不快の感情に関するものである。カントは、快・不快という感情の内に万人に共通する普遍妥当性を探求する。 ### 規定的判断力(認識判断) 普遍→特殊 普遍(図式・悟性概念)&特殊(直観がもたらすカオス的多様)→悟性に従って構想力が多様を統合→認識 ### 反省的判断力(趣味判断) 特殊→普遍 特殊(カオス的多様)→構想力が自由に働き多様を統合→この構想力の働きで悟性が働き普遍性を与える→快として表象→美 ## 趣味判断とカントの立場 人間は、ある対象に対して、快・不快の感情を抱く。これは判断力に基づいている。そして、ある対象の形式が、我々の内に快をもたらすとき、この対象は「美」と呼ばれる。このある対象に対する美の判断を`趣味判断・美的判断(Geschmacksurteil)`という。そして、趣味判断は全くの主観的なものに留まるとするのが主観主義的美学であり、これとは逆に美そのものが存在し芸術作品はこれを現出させると考えるのが存在論的美学である。そして、カントの美学において、この主観主義的美学(「構想力と悟性の自由な遊び」)と存在論的美学(「美的理念」)が混在している。 ## 第三批判の概要 判断力に対する考察は、美的判断力の批判と目的論的判断力の批判の二つに分けられる。美的判断力に対する批判は、美と崇高に対する分析を試みた後、美と崇高に対する演繹論を展開する。その際に、芸術美に対して論究されるが、自然美は概念を前提としないが芸術美は概念を前提とするため、美が概念を前提とするのかそれともしないのかということが問題としてあがる。そして、この矛盾する二つの観点を弁証論で総合することを試みる。そして、そこで 「美的理念」というイデア的な美の観念に至り、これが後のドイツ美学を決定づけることになる。目的論的判断力に関してはここでは触れない。
First posted 2010/11/11
Last updated 2010/11/18
Last updated 2010/11/18